TOP >  知っておきたい退職金優遇税制

知っておきたい退職金優遇税制

2018年9月25日

 

退職金の優遇税制をご存じでしょうか?若いサラリーマンには馴染みがないかもしれませんが、退職時期が近づくに従い身近なものになってきます。

 

 退職一時金の特徴

退職一時金は退職所得として、給与所得や不動産所得、雑所得などとは合算されず個別に所得税の税率が適用されます(分離課税方式)。

税負担が軽くなるよう特別に扱われる理由は、退職金が長年の勤務に対する功労・慰労を意味する対価であり、退職金を受け取る本人にとって、老後の生活の保障となる場合が多いためです。 
実際、長年勤務したサラリーマンが例えば1500万円の退職金を受け取ったとしても、現在の給与と合算して課税されてしまうと、4割近く税金を取られてしまう可能性もあり、老後の生活が脅かされてしまうため、税が優遇されるのです。

同様の理由で、控除が手厚いのも特徴です。
勤続20年以下では、40万円×勤続年数が退職所得控除額となります。
さらに勤続20年超の人は、20年を超える部分について70万円×勤続年数が退職所得控除額となる仕組みとなっています。

実際の課税対象となる退職所得は、退職一時金からこの控除額を引いた後の額の1/2となるため相当控除が厚いといえます。20年を超える部分の控除額が増額されているのは、長年の勤続に対するいわゆるご褒美的は意味合いが強いのではないかと思います。これまでの日本における終身雇用の中で培われたものといえるでしょう。

 

 多様化する働き方への対応

ところが、働き方改革が叫ばれ、「同一賃金、同一労働」「ダイバーシティ」等の言葉が生まれ、終身雇用が必ずしも美徳とはならない世の中になってきました。  
慢性的な人手不足により、人材の流動化も進んでいくでしょう。このような世間の流れに対し、1つの会社に居続けたほうが退職一時金の手取りが有利になることを意味する退職金優遇税制は必ずしも時代の要請に合っていないのかもしれません。

昨年11月に公表された政府税制調査会の中間報告書に「退職所得控除は勤続期間が20年を超えると控除額が急増する仕組みになっていることが、転職に対して中立的ではなく、働き方の多様化を想定していないとの指摘がある」との一文が加えられました。

日本の終身雇用慣行が縮小し転職が一般的になる中で、現行制度は転職者に不利な内容となっており、これを解消するというわけです。今後の税制改正で退職一時金の控除制度見直しも、多様な働き方への対応という流れの中で議論される可能性が高まっています。

勤続20年超の優遇部分が見直しの対象になるとは思われますが、1つの会社に勤続20年超の人にとっては増税になってしまいます。また分離課税をどうするかの議論もあるでしょう。

老後の資産形成にも影響する話題ですので、今後の制度設計の議論に注目です。

HPH180830-005-01

最近の投稿

がんの治療ってどんなものがあるの!?

厚生労働省は毎年日本の人口や死亡数、死亡の原因などの統計をとっており、一般にも公表されております。 その中で「がん」は、昭和56年以降日本人の死因の1位で、お亡くなりになられた方の3.5人に1人はがんが原因です。 とはい […]

「シュリンクフレーション」をご存知ですか?

「シュリンクフレーション」という言葉を聞いたことがありますか?あまり聞きなれない言葉ですが、最近、注目されています。 実は、この言葉は造語で、「シュリンク」(収縮する)と「インフレーション」(物価上昇)を掛け合わせた言葉 […]

生命保険、なんとなく入っていませんか?

生命保険は万が一があった時に、ご自身やご家族が困らないように必要と感じている方がほとんどでしょう。現在日本の生命保険の世帯加入率は、88.7%です。   しかし、たくさん保険に加入すれば良いとは限りません。 商品の種類が […]

病気ケガの入院時の所得補償【傷病手当金】

今回は、「傷病手当金」についてお話いたします。    傷病手当金は、どうすればもらえるの? 支給期間はどのくらい?いくらもらえるの?と疑問があると思います。 それぞれについて記載させていただきます。       […]

保険加入の際の健康状態について

現在保険に入ろうと思っている方も、いずれ検討しようと思っている方も、保険に加入する際に様々な条件がつく可能性がある事をご存知でしょうか?   生命保険のお申込を行うときには健康状態を「告知」していただく必要があります。 […]

うつ病でも自転車保険の保障が得られる方法

自転車に乗ると、天然の神経物質「セロトニン」や「エンドルフィン」が脳の情報伝達バランスを整え、うつ病の症状の改善に役立つという結果が研究によって明らかにされています。 しかしながら、他人と事故を起こしてしまったり、最悪の […]

『マイナス金利』でもお金は増やせる?!

近年よく耳にする『マイナス金利』ですが、どのようなものだったのか、おさらいしてみましょう。    『マイナス金利』とは まず、『マイナス金利』とは・・・ ◆政府(政策)の狙い 1.日本銀行が民間の銀行から資金を預かる時の […]

【配偶者控除および配偶者特別控除】パート主婦の年収の壁とは?

2018年1月から配偶者控除および配偶者特別控除の見直しが行われ、配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額などが大きく改正されています。    これまでの仕組み それまで夫は妻を税法上の扶養とするために、パート等で […]

住宅ローンを組む前に・・ライフプランニングのすすめ

  今回は「住宅ローン控除」についてお話したいと思います! 住宅購入の際、住宅ローンを組まれた方は、住宅ローン控除の恩恵を受けることができます。(10年以上の借入期間、床面積50平方メートル以上など、いくつかの […]

10年以上使っていない銀行口座は2019年から「休眠預金」に・・・!

貯金が大好きと言われる日本人は、平均1人当たり3.5口座を保有しているようですが、「休眠預金」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?    休眠預金とは 長期間動きのない口座のことを「休眠預金」といい、最後 […]

ページトップボタン