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待機児童解消に向けての「大規模マンションでの保育園の設置促進」

2018年9月4日

今回も、待機児童の問題を取り上げます。待機児童の解消には保育の受け皿となる施設や保育士の確保が必要不可欠となります。しかし、政府が講じる施策が思うような成果に繋がっておらず、施設や保育士の不足は深刻化する一方です。

そこで、今回は、「子育て安心プラン」に掲げられた施策の一つ、「大規模マンションでの保育園の設置促進」について見ていきたいと思います。

 

 「大規模マンションでの保育園の設置促進」とは?

昨年の10月、国土交通省と厚生労働省の両省は、「大規模マンションでの保育園の設置促進」についての通知を都道府県や政令市などの地方公共団体に出しました。この通知は、大規模マンションの建設が計画されている地域において、新たな保育施設が必要と見込まれる場合、自治体がそのマンションの開発事業者に対して保育施設の併設を要請することを促すものです。

建物の大きさを制限する「容積率」を緩和する特別措置など、一見すると、マンションの開発業者にとってのメリットも多いように思えます。それにも拘らず、現状では、保育施設を併設したマンションの数はそれほど増えていません。それにはどのような事情があるのでしょうか。マンションの居住者と開発業者、行政(自治体)、それぞれの視点から整理してみたいと思います。

 

 それぞれの視点

まず、居住者にとってのメリットが少ないことが挙げられます。仮に、併設される施設が人気の認可保育園の場合、そこに住んでいるからといって優先的に入所できる訳ではありません。他の地域住民と同等に審査され、落選することもあるのです。また、保育施設の利用ニーズは子育て世帯に限られます。高齢者や単身者といった他の居住世帯にとってのメリットはあまりないと言わざるを得ません。

開発業者も同様です。施設の開設には多くの審査を要します。そのための作業にかかる労力も大きな負担となります。また、都市部などの土地は、商業施設やホテルとの争奪戦の上で買収したものです。事業として少しでも収益性を高める必要があります。計画後に自治体から保育所設置を要望されても、一企業の使命感やCSR(企業の社会的責任)などというだけでは対応が難しいのが現状です。

行政(自治体)としても、現状は、開発業者との協議の上で保育施設の併設について協力をお願いすることしかできません。そして、政府も、今回の通知だけで待機児童の問題が解決するとはもちろん思っていません。よって、今のところ、この施策にどれだけの成果が期待できるのかについては、「不透明」な部分が多いと言わざるを得ないのです。

 

 今後の施策

保育の受け皿の確保に民間事業者の協力が欠かせないことは言うまでもありません。この施策についても、マンションの開発業者を納得させるだけの対策を検討する余地はまだあると思います。例えば、初めは、認可外の施設として創設、居住者に入所の「優先権」を付与し、数年後に認可保育所に移行するという条件でマンションを建設する、こうした柔軟な対応も可能ではないでしょうか。

また、将来の保育施設の需要減少を想定し、許容されうる用途変更、例えば、学童保育や高齢者福祉施設などへの変更を都市計画に盛り込むことも可能となっています。将来を見据えた発想で、モデルとなるような事例を積み上げていくことがまずは大切なことだと思います。

この施策が待機児童の解消において効果的なものとなり得るか、今後も注目していきたいと思います。

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