子ども・子育て支援法の改正(越境入園の促進)
2018年8月14日厚生労働省は、17年10月時点で認可保育所などに入所できない待機児童の数を全国で5万5,433人と発表しました。
4月の時点から2万9,352人も増えたことになったのですが、これには、同省が17年3月に待機児童の定義を広げて、子供が認可保育施設などに入所できないことで保護者が復職を諦め、育児休業を延長したケースなども対象に含めるよう見直したことが影響しています。
同省では、毎年4月と10月の時点での待機児童の数を公表しています。4月は、卒園や保育施設の新設などで「供給」が増え、10月は、新たに生まれた子供や保護者の育児休業明けなどで「需要」が増える傾向にあります。よって、10月に待機児童の数が増えるのは分かります。
とは言え、全国の待機児童の数が3年連続で増加、しかも、前年同時期から倍増というのは、極めて「深刻」な状況です。 政府は、待機児童の解消に向けた様々な対策を講じていますが、現状はというと先述のとおりで、手詰まり感さえ漂っています。
そうしたなか、「子ども・子育て支援法」が改正されることになり、この4月より施行されています。
「子ども・子育て支援法」の改正内容
改正法では、新たな対策として、保護者が住む自治体以外の保育所への「越境入園」を促し、保育ニーズを広域調整する仕組みもスタートします。
待機児童は、主に都市部に集中しています。市区町村別では、横浜市が最多の1,877人、次いで、さいたま市の1,345人、大阪市の1,335人となっています。こうした大都市のように待機児童が溢れる地域もあれば、施設の定員にまだまだ余裕がある地域もあります。そこで、近隣や勤務先などの地域で定員に余裕がある場合、居住する自治体以外への「越境入園」を促していこうということです。
これまでは、居住する自治体以外への申請は「例外扱い」とされ、実際の利用は困難でした。改正法では、都道府県を調整役に市区町村や事業者が協議会を設置して越境利用の調整を行うことになります。川崎と横浜の両市では、この仕組みを先取りする形で14年に協定を結び、市境に共同で設置した保育所の定員枠を2市で分け合い、双方の子供を受け入れる態勢を整備しているとのことです。
しかし、需要と供給がうまく合致するかが問題です。例えば、近隣の自治体に施設の空きがあっても、通勤や送り迎えで大幅に負担が増えてしまうケースも想定されます。また、待機児童が集中する大都市では、近隣の自治体でも同様に受け入れ枠が不足しており、越境入園のしようがないケースもあるでしょう。効果的なマッチングを実現できるかについては不透明な部分も多いと思います。
効果的なマッチングを実現させるためには、各地域が連携し、それぞれの生活圏の実情に応じて保育施設を整備していくことが重要になります。先述した川崎・横浜両市の取り組みも事例として参考になるでしょう。今後、自身の居住地域だけでなく、近隣や勤務先の地域についても、保育施設の利用状況などをしっかりと把握しておくことが大切になるかと思います。
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